超高齢社会、認知症800万人時代、人生100年時代
どれをとっても「人生の最期をどこで迎えるか」高齢者だけではなく生きている私達の最後の課題ではないでしょうか。
自宅か施設か
人生の最期の場所を語る上で大事な数字があります。
「80%・13%」
この2つは何を表す数字かご存知でしょうか?
これはまさに「人生の最期をどこで迎えたか」を表す数字です。
80%→病院で最期を迎えた方
13%→自宅で最期を迎えた方
つまり亡くなった方100人のうち、80人は病院で最期を迎えていることになります。これは高度成長期1970年代を境に逆転しており、それまでは自宅で最期を迎える方80%という時代もありました。
ここまでお話をするとこの原稿を読んでいる方は「じゃあ最期は病院でいいんじゃないの?それでよくない?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。
もう一つ「40」という数字があります。
「40%」この数字はなにを表す数字でしょうか?
先程自宅で最期を迎える方13%というお話をしましたが、実は国・厚生労働省はこの数字を更に40%まで引き上げようとしています。
なぜでしょう?
では今度はこの数字です。
「90万・130万」
90万→これは全国にある病院のベッド数、そして130万→これは1年間で最期を迎える方の数です。
もうお分かりかと思いますが、そうです。
病院のベッドが足りないのです。足りなければ増やせば、皆さんご承知の通り社会保障費が逼迫する中もはやそのような時代ではなく、逆に地域医療構想の中で病院数の適正化が図られようとしています。
日本の方針
このような背景があった上での40%です。厳密に言えば国は「何がなんでも自宅で」と考えている訳ではなく、また65歳以上の世帯で約60%が夫婦のみ、もしくは単独世帯の状況の中、現実的ではないと言えます。
国はとにかく「病院以外」の場所で最期を迎えられるうように着々と準備をしているのです。最近皆さんの地域、自宅周辺に何が増えているでしょうか?
デイサービスやヘルパーステーション、訪問看護に調剤薬局、往診専門のクリニック。そしてサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームといった医療介護サービス事業所がたくさん増えているのではないでしょうか。「あ、またここも老人ホームなんだ」日常生活の中でそう感じる場面も多いのではないでしょうか。
そうです。病院以外の場所とは自宅も含めた「介護施設」であり、そのような場所で最期を迎えることができるように確実に準備が進んでいることになります。
つまり「高齢者施設に入るかどうか」ということは、本人の価値観だけで決められるものではなく必然的に「選ばざるを得ない」社会状況になっていると言えます。
自然災害が高齢者介護施設に与える影響
また昨今の台風や大雨といった自然災害も「自宅以外」の選択肢も後押ししているように思います。高齢者の方が自然災害によって傷んだ家屋を修復するということは金銭的な問題だけでなく、精神的負担もかなり大きいように思います。実際担当している利用者の方にも、3年前の大阪府北部地震で屋根が半壊し修復する気力が続かずサービス付き高齢者向け住宅への入居を決意された方もいらっしゃいました。
施設がいいのか、自宅がいいのか
判断に迷うところですが、実際に施設に入居する方、最期まで自宅で過ごす方、違いはどこにあるのでしょうか?経済的な要因、家族的な背景、介護が必要になったかどうか、色々あると思います。
私が介護業界に入り20年以上経ちますが、はっきり言えることは施設入所の決め手は「介護の必要度」とは必ずしも比例しないということです。例え寝たきりであってもショートステイを使いながら、重度の認知症があっても毎日ヘルパーを使いながら自宅で生活されてきた方をたくさん見てきました。
では施設か自宅か、その境目はどこにあるのか?
それはご本人が「寂しいと思うかどうか」だと思います。
どれだけ体が元気でも、どれだけ自由に歩くことができる方でも「寂しい」と思われた方はご自身で元気なうちに施設入所を決めている方が多いように思います。もちろん「家族に迷惑をかけたくない」という気持ちもあるでしょう。逆にそう思わない方は、体が不自由になっても自宅で頑張って生活されている方はたくさんいらっしゃるということです。
最後に
この「高齢者施設の選び方」シリーズでは、実際に今これから介護が必要になるかどうか関係なく、具体的に施設選びを検討されているご本人・ご家族だけでなく、「自宅か施設か」で悩んでいる方にも是非読んで頂きたいと思っています。
その上で同シリーズを読み終わったあとに「やっぱり家がいい」と思って頂ければ、それはそれで読まれた方の気持ちの後押しが出来たと専門職として幸いに思います。実際今の社会状況になる前、対面で「施設の選び方セミナ−」を開催していた頃私のセミナーに参加して頂いた方も、一通り施設見学が終わった後「私には施設はまだ早いのよね」と一言残して去っていかれた方もいらっしゃいます。
施設の選び方をお話することは、いずれかの選択肢の一助になると思っていまる。
高齢者施設の世界を皆さんと一緒に覗いていきたいと思います。
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