遺言書を書くまえに
「遺言書を書いたほうがいい」「遺言書書かないと大変なことになる」こういう言葉、よく耳にしますが実際に書いている方皆さんの周りにどれくらいいるでしょうか。
実際に書かれた遺言書年間で約13万件。年間死亡者数約130万人、これだけ終活が注目されている中でおよそ10人に1人書いているかどうか、という計算になります。
結論から言いますと「書くよりも大事なことがある」というのが、今回のコラムの主訴となります。
「ACP」という言葉
みなさん「ACP」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
「アドバンス・ケア・プランニング」と言いまして、将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて患者さんを主体に、家族や近しい人、医療ケアチームが繰り返し話し合いを行い、患者さんの意思決定を支援するプロセスのことです。
さまざまな物議を呼んだ芸人の人生会議のポスター。アレですね。
医療介護の世界では、共通言語になりつつありますが一般社会の中ではまだ市民権を得ていないのではないかと思います。
「プランニング」と聞くと何か難しく思うかもしれませんが、ACPは決して入院患者だけを想定しているのではなく「人生をどうするか」考える全ての人が対象と言えます。
自分の人生をどうしたいのか、病気になったら治療を受けるのかどうか、こんなことを考えていきます。
そして何より一番大事なポイントは「繰り返し話し合う」です。
なぜか。
遺言書にせよ、エンディングノートにせよ日本人は「書かないのではないか」と思うからです。
繰り返し話し合うこと
介護保険がスタートしたのが2000年、以降エンディングノートの映画しかりメディアを通じて今でも多くの法律家が「遺言書の必要性」を訴えていますが、結果「10人に1人」です。これは欧米とは違う日本人の文化だと思いますが、では何も考えなくていいのかというとそうではなく「話し合い」をしてほしいのです。
ここでいう「話し合い」とは何もかしこまって家族が集まるのではなく、喫茶店での友人との会話、レストランでの知人とのおしゃべりなど家族以外の方とも「そろそろどうする?」「なんか考えてる?」こんな一言で話を始めてほしいのです。
今の社会のルールに合わせるなら「少人数で」「静かに楽しく」といったところでしょうか。
「何かを書く」というのは意思が固まった結果であり、意思を固めるには一人で熟考するよりも「しゃべりあう」ほうが情報共有を図りながら自分の考えに気付くことができます。ましてや「最期どうするか」などシビアな問題を避けられないテーマであれば、なおさらお互いに感情を和らげる意味でも「しゃべりあう」が大事ではないかと思います。
何度も話し合う
そしてACPではこうも伝えています「何度も」と。
人の気持ちは周りの空気や環境に支配されやすいので、一瞬で変わります。昨日の気持ちが今日もそうだとは限りません。だから「何度も」話し合いをしてほしいと思います。
その上で「書き記したい」と思えば、それが遺言書なのかエンディングノートなのか1枚のメモなのか、それはあくまでその人の「好み」だと思います。
何かを書く前に話し合ってみる。
1度心がけてみてはいかがでしょうか。